婚約者を奪われ追放された魔女は皇帝の溺愛演技に翻弄されてます!

 聖女であるシャロンもこの場にいたのだ。でも、不思議と渦巻く様な黒い感情は湧いてこなかった。

 どちらかというと、興味もないと言うのが一番しっくりくる。きっと呪いの仮面に恨みつらみを移したから、義妹に対する感情ごとなくなってしまったみたいだ。

「……解呪の邪魔だから出ていって」
「そんなに私に邪魔してほしくないのね! 皇帝陛下を騙して皇后になった上に、こんな呪いをかけて帝国を乗っ取るつもりなのね!?」

 傍目から見たら聖女として認識されているシャロンが、魔女の私の悪事を暴露しているように見えるだろう。あの時もそうだった。今回は完全に勘違いしているみたいだけど。

 動こうとするレイに目配せして、待ってもらう。どうにもならなかったら、助けてもらおう。

「私が呪ったという証拠はあるの?」
「お義姉様が魔女であるのがなによりの証拠じゃない! いい加減罪を認めて!」

 周囲がザワザワと(ざわ)めきだす。確かに魔女は呪いを操れるから、このままでは私に疑念の目を向ける者が出てくるだろう。

 私は構わないけど、レイにとっては足枷になってしまう。皇帝の仕事を邪魔したいわけではないから、なんとかしなければ。


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