極上の一夜で懐妊したらエリートパイロットの溺愛新婚生活がはじまりました
「あ、……りがとう……」

 果歩はまだ信じられない気持ちでお礼を言った。

 二年半前、操縦士の白い制服と制帽の姿で、彼がこうしてくれた、という想い出と、目の前の彼がリンクする。

 翔は再び、床に膝をついた。

 なにをするかと思えば、ベビーカーで目を丸くしていた航に、にこっと笑いかける。

「ごめんな、ボク。怖かったよな。もう大丈夫だよ」

 安心させるように言った翔。

 航は『よくわからない』という顔ながら、助けてくれたのだということ自体は悟ったようだ。

 こくんと頷いた。

「……飛行機、好きなのか?」

 ふと、翔の視線は、航が持っていたぬいぐるみの飛行機に向いた。

 数秒、止まったあとに質問する。

 どくん、と果歩の心臓も高鳴った。

 まさか、わかったはずはない、だって航はまだ幼児で顔立ちだって大人とは違う。

 翔と似ているかなんて、わかるはずがない。

 ああ、でも、自分とのあの時間からの経過を考えれば、まさか……。

 どくん、どくん、と心臓が高鳴る。

 それがいい意味なのか、悪い意味なのかすら、果歩は自分でわからなかった。
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