太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~

運命の出逢い/side諒

いよいよ今日か…

自宅マンションからソレイユまで約20分、車を走らせる。


スタッフと初の顔合わせ。

中沢さんはみんないい人ばかりだと言っていたけど…
そんなことあるわけないだろ。

俺のおじさん…父の姉の夫だという社長にこの会社に呼ばれて、研修から入った1社(第一支社)は正直、居心地が悪かった。

中にはまともそうな人もいたが、施行担当者は楽して稼ぎたいって奴を多く見たし、俺を見て色気を出してきた女の多さには辟易して…なんか色々とうんざりだった。

職場の食事や飲み会は誘われれば行ったけど、自分の事は話したくないし、他の奴らにも興味ないから、ただただ相づちを打つだけ。

ただ…1社で俺を最初に指導してくれてた福田さんはちょっと違ってたな。
たまに飲みに誘ってくれて、ガンガン自分の事を話して、俺にもガンガン質問やら何やらぶつけてくるけど、不思議と嫌な気はしなかった。

女から食事に誘われた時は断っていた。
あまりにもしつこくて断りきれずに行った事が何度かあったが、俺が相手に全く興味を示さないのが面白くなかったらしく、その人達からは二度と誘われることはなかった。

ま、俺もその方がありがたい。

酒の席ではもっと誘い方があからさまで、解散後に酔ったフリしてホテルに誘われる事が何度かあり、正直引いた。

そういう事をするのはたいてい自分の容姿に自信があるヤツばかりで、確かにきれいとか可愛いと言われるタイプなんだと思う。

俺も男で、女に興味がない訳ではないが、ただの同僚、しかも好きでもない女を抱くなんてのは面倒でしかない。

そもそも好きな女すら作れない。
いや、作れないのか、好きになれる人がいないのか、それはよくわからないけど。


誰にも自分をさらけ出せないとか、こんな自分が嫌にもなるが…

大学生になっても、最初の会社に就職しても、今の会社に移っても…

いつも誰かに踏み出す一歩が出せない…



そんな時に、ソレイユ支配人のオファーが来た。

社長から直々に。

『何でまだ下っ端の俺が?』

素直にそう聞き返したが、社長の答えは意外なものだった。

『お前が必要としている場所だからだ』

俺が、
必要としている、
場所?

初めて聞く言葉みたいに、何度も反芻して考えた。

でもわからなくて。

もちろん断ったが、次に社長から言われたのが、

『お前の大学の学費を払ったのは私だ。…だから、今度は私の言うことを聞いてくれないか』

というお願いだか命令だかよくわからない言葉。

ハァ…もう…どうだっていいや。

俺はどこにいても同じなんだから。

おじさんが何をしたいのかわからないけど、こんな俺を支配人にするとか、どうなっても知らねぇぞ?

そんな気持ちから入った支配人研修だけど、やるべき事を教えてもらい、覚え、真面目にこなしていく内に支配人業務に取り組む事が楽しくなった。


あとは…現場で、どうなるか…

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