太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
「どうだい、ソレイユのスタッフは。と言ってもあれだけじゃよくわからないだろうけどね。ハハハ」

朝礼を終えて、ソレイユの事務所に向かいながら中沢さんが俺に聞く。

「そうですね、ここは専属スタッフということもあるんでしょうけど、1社で見てきた感じとは全然違いますね。スタッフの空気感が違うというか」
これが率直に思ったところ。

「そうだろうね、何せみんな社長が選び抜いた人達だからね」

「そうなんですか?」

「あぁ、もちろんソレイユで働きたいと希望を出した人達なんだけど、その中から社長が面談して採用された人達なんだよ」

「へぇ…」

「社長はね、かねてから〝あったかいホールを作りたい〞と言っていてね。確かにここはウチの会社では色々と今までにないホールだけど、一番のこだわりは『人』なんだそうだ」

「人、ですか…」

「さっきの朝礼の雰囲気だけではわからないが、仕事をしている時の彼らも見ればわかるはずだよ」

穏やかな顔で、中沢さんは俺を見る。

「社長は…ずっときみをここに呼びたがっていたよ、スタッフとしてね。でも人数的にまだ増やせる段階ではなくてね。だからその時が来るまで1社で力をつけてもらうと言っていたよ」

「はぁ… 」

「ただ、そうこうしている内に私の定年退職の話も上がってね、そこで、私の後継にという話が出たんだよ」

「そうでしたか…」

「ウチでの経験年数も浅いし、年齢もまだ若いのに重い荷を背負わせるのも如何なものか…とは思ったけどね、それでもきみに来てもらいたかったんだ」

「…未だに、なぜ僕が、と、疑問と戸惑いがあります…」
本当に…

「その答えは、これから少しずつわかってくるよ」

「そうでしょうか」

「えぇ、断言しますよ、私は」
中沢支配人の嘘のなさそうな笑顔に言葉が返せなかった。


それからの俺は中沢さんについて回る日々で、ソレイユでの支配人の仕事やそれぞれの部署の関わりを覚えた。

支配人業務以外に施行担当もしなければならないが、まだ当分は担当はもたず、施行が入った時はサブとして入り、ここでのやり方を上原さんと高見さんに教わる。

実際に働いてみて分かったことは、ソレイユのスタッフは皆〝大人〞なのだと思う。

もっと正しく言えば、指導する立場の人間が〝大人の対応ができる〞人だ。

調理部は見習いがいるし、給仕パートはたまに新人が入る。
そういった勉強が必要な人達に対して、ミスをしたら感情的にならずに的確に指摘し、何が悪かったのか原因を探り理解してもらうが、その分しっかりフォローし、ミスをお互いに引き摺らないようにしている。

だから、指導を受ける側もある程度大人の対応ができないと、研修の段階で辞めてしまうと聞いた。

仕事は真面目に取り組みたいと思う俺にとってはすごく理想的な場所だと思うと同時に、1社では仕事のモチベーションを下げる奴らが多かったのか…と、その違いに気づくことにもなった。
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