太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~

母と真実/side麻依

今日明日の施行で諒が担当するのは、少し規模の大きいご葬儀。なので、フロントもひよりんと二人体制。

「珍しくバタバタするね」
「そうですね、最近は家族葬が多かったですもんね」


今回の施行は個人経営の工場の社長さんのご葬儀で、ご家族の意向で家族葬兼社葬の様な形なのだそう。


お通夜が終わり、通夜振る舞いに残らず帰られる方がわらわらとホールを出ていかれる。
その方々のお見送りやタクシーの手配などで、私達はせわしなく動いていた。


人の流れがある程度収まってきたところに、諒と施主様が話しながら階段を降りてきた。

んー、いつ見てもカッコいいなぁ…って一瞬だけ見惚れると、また仕事モードに切り替えた。


ロビー全体を失礼にあたらない程度に見渡すと、先程からソファに座ったままの女性が気になった。
40、50代位のきれいな女性。

タクシーも頼まれていないし、何だろう、気分でも優れないのかな?と気にかけていたのだが、その女性が諒と施主様の方を見ている事に気がついた。

あぁ、なるほど。
施主様に用事があったのね。


それから、施主様が諒に挨拶するとまた2階に上がっていったのだけど、その女性は施主様を追おうとはしなかった。

あれ?施主様待ちじゃなかったんだ。

と、再度その女性を見ると、どこか一点を見つめていて、その目線の先を辿るとそこには…諒がいた。


あぁ…またでしたか。
諒はほんとに老若問わず惹き付けるんだもんなぁ。
ま、こういったことでは妬かなくなったけどね。


程なくして見ると、その女性の姿は見えなくなっていた。

あぁ、きっとお迎え待ちだったのね。


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