太陽がくれた初恋~溺愛するから、覚悟して?~
俺のあとに智さんが「んじゃちょっと風呂借りるなー」とバスルームに入ったので、その間に泊まらせる支度をする。


…シャワーが途切れた時に歌声が聞こえてきた。

人ん家で気持ちよく歌いながらシャワーできる性格っていいよな。
ちょっと羨ましいかも。

そう言えば…
いつの間にか智さんに名前で呼ばれてた。
あまりにも自然で気付かなかったけど、ほんとそういう所とかもすごいと思うよ。


そんなことを考えていたら、智さんが「風呂、サンキューなー」とリビングに戻ってきた。


「そんで、なぁ…お前はどうやって羽倉を落としたんだ?」

智さんがタオルでガシガシと頭を拭来ながら聞いてきた。


「え?いや、落としたわけではないですよ。…ただ…俺が惚れただけです」

「それだけなワケあるか」

「ほんとにそれだけですよ。…最初は気になって、それから好きになって…で、この人が欲しいって思ったらカッコ悪いくらいすげぇがむしゃらだった感じです」

俺はちょっと恥ずかしくてハハハと笑ったけど、智さんは真面目な顔して聞いてた。


「諒、お前まさか、羽倉が初恋とか言わねーよな」

「いや、そうみたいです。この歳で麻依が初恋です」

「あー…それかもなー、お前と俺のおっきな違い」

「え?」

「俺はさー、やっぱどっかでカッコつけたい部分があるワケよ、同期だしさ。なんかスマートに付き合って、惚れさせて、みたいな?だからみっともないくらいガツガツいくとかできなかったんだよなー」

「……」
いや、充分ガツガツいってたんじゃ…
…とは言えないけど。


「…もし俺ももっとがむしゃらにアタックしてたら羽倉に惚れてもらえたのかなぁ…」

「さぁどうですかね。それはまた別のお話かと」

「なっ、諒までそんなこと言うのかよぉ…もうプンだ」

「俺も必死ですから。麻依が大好き過ぎて。だからもしもの話でも渡したくないです」

「…はー…マジでお前には勝てねぇわ」

「麻依のことだけは負けたくないですから」

「わかったわかった。もう降参」

「…でも、俺が麻依を好きになるきっかけを作ったのは智さんですよ、たぶん。智さんが俺に麻依のことを教えてくれて『何かあれば羽倉に頼れ』って言ったから気になり出したんです」

「な」

「…でも、それがなくても俺が麻依に惚れるのは時間の問題だったでしょうけどね。それだけ魅力のある人ですから、麻依は」

そう言って愛しい麻依を思い出したらフッと顔が緩んだ。

「お前…カッコいいな。男らしくなった」

「そうですか?」

「ああ、何なら…フ…俺を抱い「お断りします」

「早っ冷たっひどっ」

「俺が抱くのは麻依だけですから。…明日仕事なんで、もう寝ますよ」

「えっ、同じベッドで?」

「なんでそんなワクワクして聞くんですか!智さんはこのソファです!一応フラットになりますから」

「えー、俺もベッドで寝かせろよぉ、何なら抱けよぉ」

「嫌ですよ」

「じゃあ恋バナしようぜ?羽倉を抱いた時の事とかさぁ。どんな?ねぇアイツどんな感じなの?」

「寝ますよ」

「諒くんのいけずぅ、いいもん寝るもん、おやすみプンだ」

「ハイハイ、おやすみなさい。明日起こしますから」

こうして俺は智さんを抱くことも抱かれることもなく無事に朝を迎えた。
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