本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
いつもはラフにセットされている短髪が今日はヘアワックスで整えられ、張りのある前髪が額を斜めに覆っていた。

服装の色合いもいつもと違う。

裾の長い白衣か薄い緑色の手術着姿ばかり見てきたため、黒い羽織姿はなおさら新鮮に目に映った。

盃にかかる器用そうな長い指は男らしく節くれ立ち、首筋から着物の衿までのラインや喉仏に色気を感じて真琴の鼓動が静かに速度を上げる。

(生嶋先生って、かっこいいんだ)

職場での女性人気が高いのはよく知っているが、今までは彼を恋愛対象として意識しなかった。

(恋愛をすっ飛ばしてのこの結婚。結婚後に恋が芽生える可能性は......)

考えながら見つめてしまったら、盃を置いた彼が視線に気づいて真琴の方を向いた。

跳ねた鼓動をごまかそうと大げさなほど微笑みかけた真琴に対し、修平はニコリともせず視線を前に戻した。

(私と結婚したいと言い出したのは先生なんだから、少しくらい笑ってよ)

修平と結婚していいのかという解決済みだったはずの迷いが再燃する。

けれども親族席で嬉しそうにしている両親に視線を移し、その迷いを心の隅に追いやった。
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