本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
捨てられて拾われて
雅楽が流れる厳かな神殿で大谷真琴(おおたにまこと)、二十八歳は三々九度の二の盃を手にしている。

小ぶりの鼻と薄い唇、奥二重の目をした真琴は、アッサリした顔だと友人から評価されたことがある。

そんな真琴でも白無垢に身を包み唇に鮮やかな紅を引けば、それなりに美しく見えた。

真琴が形ばかりに口をつけた盃は、巫女の手により隣の新郎に渡された。

酒を注がれている彼の様子を綿帽子の下からそっと窺い、心の中で唸る。

(新婦より新郎の方が断然きれい。和装も似合うんだ。生嶋先生ならどんな服でも着こなせそう)

真琴の夫になろうとしているのは生嶋修平(いくしましゅうへい)、男盛りの三十六歳だ。

都内の大学病院で外科医を務めているが、モデルや俳優など人に見られる職業の選択も可能なほどルックスが優れている。

引き締まった細身の体躯に百八十センチ越えの高身長。

こげ茶色の目は涼やかな切れ長二重で、筋の通った鼻や適度に厚みのある唇は形が整っている。
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