本能のまま、冷徹ドクターは新妻を愛し尽くす
冷菜を入れた重たいクーラーボックスふたつを両肩にかけて調理場を出ようとしたら、やっと立ち上がった兄に呼び止められた。

「ついでに俺のバンにそれも積んどいて」

「えっ」

兄も間もなく配達に出る時間で、重箱十二個が入った二段のフードテナーを指さしていた。

「一度に運べないからついでじゃない。私、女なんだけど」

「どこに非力な女の子がいるんだ? 男並みに背が高いし、真琴なら余裕だろ」

「〝と〟をつけて呼ばないで」

真琴にはコンプレックスがある。

子供の頃からクラスメイトの女子より頭ひとつ分背が高く、百七十三センチまで伸びてやっと成長が止まってくれた。

ショートボブの髪形だった小学生の頃はよく男子に間違えられ、女子トイレに入ろうとしたら、『マコトくん、いたずらはいけないよ』と教育実習の先生に注意されたのは忘れられない屈辱だ。

せめて女の子にしかつけない名前だったらよかったのにという思いから、家族や友人にマコと呼んでもらっている。

「なんで本名を嫌がるんだ」

(知っているでしょ。意地悪)
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