横浜山手の宝石魔術師

「中華街近くのビルでおかしな事が起きたんです!

女性から男性の声が聞こえて、あの、インカローズのブレスレットが」


「朱音」


必死に大きな背中に声をかけていたが、健人は振り返り朱音の名前を呼ぶ。


「冬真は全てわかってる。

後はプロに任せるんだ。もう俺たちの出る幕は無い」


「でも!」


「・・・・・・例えばお前が病院のビラ配りをして、患者を見つけて病院に知らせたとする。

そんなお前に手術が出来るのか?」


淡々と話す健人に、朱音は思わず抗議の声を上げた。


「そんなの、今回のこととは違います!

きっと危ないことが起きてるんです!だから」


「だからだ」


健人は興奮している朱音に静かな声で返した。


「だから俺たち普通の人間が入り込んではいけないんだ。

元々は冬真が巻き込んだことでお前がそう思うのは無理も無い。

だけどプロがここからはお前に関わらないようにさせたんだ。

危険な目にあったのなら余計にお前はこれ以上関わってはいけない」


そう言われても、朱音はどうしても冬真の元へ、せめて話がしたくて仕方が無い。

そんな朱音を健人は真っ直ぐにその必死な瞳を受け止める。


「冬真に、朱音さんを頼みますと言われたんだ。

これ以上お前が勝手に動けばあいつが心配するぞ?」


優しく健人が言えば朱音の目が見開いた後俯いて、はい、と自分に言い聞かせるように小さく答えた。

それを聞いて健人は安堵したと共に、おそらく朱音の中での冬真が相当大きな存在となったことを悟る。

冬真の今の目的が『彼女』に関わることなのか、それともただ朱音という存在が魔術師として便利だからなのか。

出来ればあの冬真であっても、朱音を苦しめないで欲しい。

きっとそれは冬真に返ってくる、『彼女』の時と同じように。

健人はそんなことを思い、俯いたままの朱音に声をかけて明るいリビングへ誘った。

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