双子ママですが、別れたはずの御曹司に深愛で娶られました
「いつか美味しい酒でもごちそうしてください」
「もちろん。定期的に会えたらうれしいよ」
 男の人って不思議だ。なにかのきっかけですぐに仲良くなる人が多い気がする。
「先に戻るから」と言って立ち去る海斗を見送って、私もはたと我に返り頭を下げる。
「すみません。私もそろそろ戻ります。子どもたちの添い寝もしなきゃ」
 そうだった。現実に戻らなくちゃ。
 穂貴と詩穂はまだ夜中に寝ぼけて起きたり泣いたりするから、そばについていてあげなきゃならない。
 なんだか今夜の出来事は全部夢みたいで、実感が湧かなくて......。
 おもむろに雄吾さんを見上げる。その拍子に、ちゅっと唇に触れるだけのキスが落ちてきて、私は慌てふためいた。
 彼はポン、と私の頭上に手を乗せ、上半身を屈める。
「おやすみ。いい夢を。また連絡する」
 視界には口元に緩やかな弧を描く雄吾さんが映った。
 その夜、私は本当に穏やかな心地で眠りに就いて、幸せな夢を見た気がする。
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