監察医と魔法使い 二つの世界が交わる時
男性は顎に手を当てて呟く。口角が上がり、男性の頭の中にはどのようにこの街を破壊し、人々がどのような恐れる顔を見せるのか、それしかなかった。

「クククッ……」

男性が笑っていると、男性の真下をくたびれたスーツを着た中年と思しきサラリーマンが歩いていく。その顔はどこか疲れ切っており、歩く速度は遅い。

「こんな夜中まで仕事か。我が貴様を自由にしてやろう」

男性はそう言った後、サラリーマンに杖を向けて呪文を唱える。杖から紫の光線が飛び出し、サラリーマンの背中に当たる。

「うっ!」

男性はうめき声を上げて地面に倒れた。だが、その体はピクリとも動かない。

それを見て、男性は満足そうに笑ってその場を去って行った。



夜が明けると、またいつもの日常が始まりを告げる。学生、社会人、お年寄り、赤ん坊、日本中の人たちが目を覚ます。

目を覚ました監察医の神楽蘭(かぐららん)は、クローゼットから白いシャツと緑のスカートを出してパジャマからそれに着替える。そして、胸元には恋人の三国星夜(みくにせいや)がくれたエメラルドのブローチをつけた。
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