人を見た目で判断するな〜ダサダサ御曹司の真の顔〜
 一瞬聖七は、詮索されているのかと思った。

「じゃあ、会社の最寄り駅でお願いします」

「……」

 だが、やはり夕は夕なのだ。聖七に少しでも迷惑を掛けないようにと気遣っている。夕の性格から、これ以上一気に距離を縮めようとすると、余計に距離が開きそうなので、今日は会社まで戻ることにした。

 せっかくの二人きりのチャンスだ。少しずつだが、質問をする。

「香月さん、いやもう面倒だ。夕」

「え……」

 突然、下の名前を呼ばれた驚きと、それよりも名前を知っていた驚きとで、返事すらままならない。

「夕であってるよな」

「は、はあ」

「夕は、家族と暮らしてるのか?」

「はい…母と弟と」 

「そうか。いつかお会いしたいな」

「えっ?」

 
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