序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
 氷宮家が大騒ぎになる数時間前。白洲家から出た穂波は椿に連れられ、初めて帝都に足を踏み入れていた。

「これが帝都……」

 穂波の住んでいた町よりも高層の建築物が多く、街全体の色合いが華やかだ。屋根の色が赤かったり、金銀の装飾が施されていたり、煉瓦造りの建物もあるなど、様々な異国の建築物が混在している。

 街の真ん中を通る鉄道は、椿に案内され、先ほどまで穂波も利用してきたものだ。初めて見る黒い蒸気機関車から、もくもくと立ち昇る黒煙と、激しい音には驚いた。

 異国の服を纏っている人間も、穂波の住んでいた街よりも多く、それだけで都会の空気を感じる。

 男性はスーツ、女性はドレスやフリルの付いたワンピースを着て、革靴や高いヒールの靴を慣れた様子で履き歩いている。

 派手な服装を好んでいた蓮華の姿を見てきたものの彼女には悪いが……街の女性たちの方が垢抜けていて、洗練された気丈さを持つ女性たちが眩しく見える。

「つ、椿さん、あの小さな機関車はなんなのでしょうか」

 藤堂家のある町も国内の中では栄えてはいる方ではあるが、帝都はやはり別次元だった。国の先端の文化、流行が反映される街並み。自分の知らない世界だ。

 きらきらと目を輝かせて質問をしてくる穂波に、椿は口元を綻ばせながら一つ一つ答えていった。

「あれは乗合自動車といって……」

 自動車はまだ民間人の運転許可がこの頃は出ておらず、蒸気機関車のデザインを模した乗合自動車が走るだけだった。

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