序列100位のシンデレラ〜冷徹御曹司と、嫁入りから始まる恋をする〜
 それから二人は、多くの時間を共にした。八潮は部屋に引っ込みがちだった時隆を連れ出し、帝都中を連れ回した。最初は彼を信用しきってなく、乗り気でなかった時隆も、段々と、八潮の裏には何の野心も企みもないことを真に理解すると、心を開いていった。

 時隆の初めて見る景色、経験……その隣にはいつも八潮が居た。時隆にとって、誰かと居て心地が良いと初めて思えた相手が八潮だった。

『八潮様……!』

 秋終わりの、雷雨の夜。八潮が大怪我をして帰ってきたと、屋敷中が騒然となった時があった。血が流れ続ける右腹部を手で抑え、不規則な呼吸を繰り返す。

『悪い、なかなか厳しい仕事でな……へましちまった』

 当主の仕事は、屋敷の人間たちにも秘密裏で行われることも多く、彼に何があったのかは皆わからなかった。だがあの八潮がこんな状態になるとは……何か普通でない事態が起きたのは確かだ。

 八潮はどさりとその大きな体躯を投げ出すと、本家の玄関に倒れた。その様子を見た時隆は、手足の先から凍りつくような、味わったことのない恐怖を抱いた。大切な人が苦しんでいたり、消えてしまうかもしれない恐怖を知らなかったのだ。

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