*触れられた頬* ―冬―
 一通りを目に入れた頃、団長との話は終わったようで、凪徒の向こう側には沢山の女性団員が集まって黄色い声を上げていた。

 ──先輩……ロシアでもモテるんだ……。

 尊敬と感心と、そしてほんの少し消沈する。

 目の前には自分より色が白く、髪色も美しく、スタイルも良く、凪徒の身長に合いそうな長身の美女達が、瞳をハート型にして楽しく会話をしていた。

 ──何だか先輩、段々ペラペラになってきてる……もしかして語学の天才?

 ロシア語は簡単な挨拶程度でも比較的文章が長く、モモにはどうにも覚え辛かった。

 が、凪徒は大学で多少の基礎を習っていたとは云え、その応用力と来たらおよそこの二、三日の努力で身に着くレベルではない。

「○×▲□……△●×■……?」

「えっ? えと……?」

 自分の横に凪徒とは違う高い壁が現れて、その上の方から明らかに自分へ向けられたロシア語が降ってきた。

 モモは恐る恐る見上げたが、其処には優しそうな笑顔の金髪青年がモモを見下ろしていた。


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