*触れられた頬* ―冬―
 翌朝のモモは前日と違い早起きだった。

 こちらに来てもそれなりに続けてはいたが、今朝は特別念入りに、ストレッチや部屋で出来る運動を行なう。

 多少の(なま)りは否めないが、連日歩いていたお陰で脚の具合は悪くはない。

 あとは腕力と握力の調整だが、それも洗面所へ続く廊下の仕切りに指を掛け、ある程度のぶら下がり上下運動はこなすことが出来ていた。

「あ、また、朝食が~って、先輩に言われちゃう!」

 慌てて支度をし、隣の部屋をノックする。

 凪徒も今日のショーの為に早朝の運動を終えたところらしく、うっすらと額に汗を(にじ)ませていた。

「今夜は椿さんの所へ泊まるんだよな? モモ」

 凪徒がパンをほおばりながら、スープを口にするモモに尋ねた。

「あ、はい。何だか、あんなに素敵なお部屋を空けてしまうなんて申し訳ないのですが……」

 杏奈に気の引ける想いがしながら、それでもやはり一秒でも長く、母親の傍にいたいと願った上での選択だった。

「んなこと気にすんなよ、杏奈だって母親になるんだ。それくらい分かってる」

「はい……杏奈さんの赤ちゃんに、沢山お土産買っていきます。あ、夫人にも!」

 ──それにあの先輩の酔っ払い騒動から守ってくれた、ピン留めを作ってくれた秀成君とリンちゃんにも一杯。あ、送ってくれた暮さんと、もちろん団長と……いえ、全員に買わないとえこひいきよね?


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