*触れられた頬* ―冬―
 昨日も鑑賞した凪徒とモモに配慮したのか、演目は全て少しずつ違っていた。

 プードルの代わりに猫の曲芸、玉乗りの代わりにボールジャグリング(お手玉)の見事な技、ゾウの代わりにはゴリラのパレード……二人は昨日と同じ興奮を味わい、椿とカミエーリアもサーカスのメンバーとは時々会っていたが、ショー自体は久々だったこともあり、四人は心底楽しんだ。

 もちろん演目の間に登場するピエロは変わらず、滑稽(こっけい)飄々(ひょうひょう)としてプッと吹き出してしまうおかしさを見せる。

 モモは楽しそうに笑う母親の横顔に、珠園サーカスにもとてもひょうきんなピエロがいるのだと、暮を思い出してふふふと笑った。

 一通りのショーが終わって休憩時間がやって来た。

 モモと凪徒は立ち上がり、見やすいようにと前方に座っていた二人を、少し後方で高めの席へと連れていった。

「お母さん、それじゃ支度をしてくるね」

 少し腰を(かが)め母親に一言声を掛けたモモの手を、椿はしっかりと握り締めた。


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