*触れられた頬* ―冬―
 次に繰り出されるのはあの大技だ。身体を立てたまま横回転をする、美しいモモの舞──。

 凪徒は膝裏でブランコを(つか)み、両手を伸ばしてモモとのタイミングを計った。

 モモはブランクを感じさせず、それどころか今までで最高にキレの良い動きを見せていた。

 これなら見事に飛べるだろう。凪徒は穏やかな気持ちで、モモが手を放し飛び上がる瞬間を待った──が、

 ──早いっ!!

 モモは必要な近さに到る前にブランコを自由にして上を目指した。

 凪徒は焦った。この距離で掴まえられるのか。

 ──自分が近付く前に失速すれば、繋げないままネットに落ちる!

「モ……モっ──!」

 凪徒は思わずその名を叫んでいた。

 ──違う……あいつは、わざと早く飛んだんだ──落ち着け、凪徒! モモは全てを脳内でイメージする。身体で覚えるんじゃない、イメージを掴んで身体を動かす。あいつは『それ』を形にしたんだ……何処だ……モモを掴まえるには何処へ手を伸ばせばいい──?



 ──先輩……お願い、あたしをつかまえて──!!



 モモはありったけの力で飛んでいた。

 自分を軸にして世界が巡る。

 一回転、二回転……凪徒を信じてもう一度──


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