*触れられた頬* ―冬―
「でもやっぱり駄目だ」

「はぁっ?」

 端的に拒絶して鏡に近付き、目尻の(しわ)にめり込んだ色を綿棒で落とし始めてしまう。

「ふざけんな! 最近あいつは俺の前で泣き顔ばっかりだっ! 母さんと対面した時はともかく、それ以外は何なんだよっ!!」

「うーん……」

 困ったように(あご)をさすり、やがて意地悪そうな細い目を向けた。

「だったら、モモ本人に()け。もちろんそれが出来るのなら、もうしてるんだろうけどな。それにモモに問い(ただ)しても、モモが答えないのを分かっているから、俺に訊いてるんだろ? モモが答えないなら、俺も答えられない……お前はそれも分かっているけど、訊かずにはいられない……そういうことなんだろ?」

「う……」

 凪徒は図星の問い掛けに、返事を詰まらせてしまった。

 暮はその様子に心ある笑みを一瞬見せたが、刹那にいつになく真剣な面持ちを表し、

「『これ』はモモの問題なんだ。俺達が口出し出来る話じゃない。俺だってモモを助けたいさ……でも、とてもそんなレベルじゃない……見守ることしか、出来ないんだ……」

「助ける……!?」

 悔しそうに(うつむ)いた暮の横顔が余りにも切なそうで、凪徒はそれ以上言葉を繋げなかった。


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