*触れられた頬* ―冬―

[51]真相と反応

「なっっ──!!」

 凪徒はその衝撃に愕然と目を見開いた。

 テーブルの下の(もも)に乗せた両拳が、ギリリと音を立てそうな程にひしめいた。

 洸騎はその姿を哀しそうに見つめて、気を取り直すように一つ息を吐き、

「──っって!!」

 大きな一言を放った。

「えっ?」

「……って、言いたかったですけどね、嘘つきにはなりたくないので……あと一センチってところで、ピエロのおじさんに邪魔されました」

 ──暮──。

 凪徒も放心したように、腹の底から深い息を吐き出した。

 瞬間思い出される、あの夜モモが見せた演舞のお粗末さと、公演後の涙。

 更に否応(いやおう)も言わせずモモを抱き締めさせた暮の気迫を。

 ──モモの奴……それでこのプレハブに入るのを嫌がったんだ。

「コウキ……って言ったよな。お宅、十五年も一緒にいて、モモの何を見てきたんだ」

「え……?」

 苦しそうに唇を噛み締めた凪徒は、(つか)みかかりそうな勢いでズイッと上半身を前へ寄せた。

「あいつは自分の理解の範疇(はんちゅう)を超えると、金縛りに()ったみたいに身動きが取れなくなる。お宅はそれを利用したんじゃないのか?」

「あっ……」

 そう言われた洸騎も遥か昔を思い出した。

 小さい頃、初めて髪色をはやし立てられて呆然と立ち尽くしていたモモの姿を──そして三年前、自分の告白に目の前が真っ白になっていた彼女の表情を──。

「そういう、つもりじゃ──」

 けれど、まさしく自分のしたことは、そういうことだったのだと動揺した。


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