*触れられた頬* ―冬―
「良かった~間に合った!」

「どうしたの?」

 少し弾んだ声と白い息が唇から(こぼ)れてくる。

 リンはその手中の布包みから何かを取り出して、モモの掌にそっと乗せた。

「ヒデナーと一緒に作ったの。モモたん、こないだピン留め壊れちゃったって言ってたから、えっと……旅のハナムギ!」

「違うよ~リン! 旅の『はなむけ』!」

「あ、間違っちゃった」

 秀成に訂正され、リンはペロッと舌を出した。

 三人で笑い、モモは改めて自分の手の中の、花びら型をした淡いオレンジピンクに目を奪われる。

「キレイ~! ありがとう、リンちゃん! 秀成君!」

「ネェネェ、つけてみて!」

 モモは二人に(うなず)き、左耳にサイドの髪を掛け、そのすぐ上にピンを通した。

「やっぱりモモたんはピンク系が似合う~! ね、旅行の間、つけてくれる?」

「もちろん! 大切にするね」

 それを聞いたリンはいきなりモモの両手を取り、真剣な表情を鼻先が触れそうなほど接近させた。

「お風呂以外は絶対につけて! 絶対ダヨ!! 肌身離さず、寝る時は近くに置いてネ!」

「え……? う、うん……」

 その気迫に押されて思わずモモは頷いてしまったが、リンにはそうさせるだけの変な威圧感があった。


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