*触れられた頬* ―冬―
『えー、凪徒さん、凪徒さん、モモからすぐに離れてください』



「秀成君?」

 今度は秀成の声が、モモと凪徒の間から聞こえてきた。

 ──これって、もしかして……?

「あぁ!? 秀成~? 俺に命令する前に、お前のやるべきこと、ちゃんとやれっての!」

 ──酔ってる割には、ちゃんと返事するんだなぁ……。

 モモは冷静に凪徒の様子を観察するも、凪徒がモモの上から退()くことはなく途方に暮れた。

 そして極めつけの三発目は──。



『くぉらぁぁぁ!! 凪徒ぉぉぉっ!! モモからどけって言ってんだよっ!!』



 ──く……暮さん……?

「あっ!? ……暮っ?」

 ドスの効いた暮の怒鳴り声が、やっと凪徒の意識を覚醒させ、ビクンと顔を上げたかと思うや否や、一気に起き上がり直立した。

「あ? モモ? 何やってんだ、お前」

「な、何って~~~!」

 途端正気を取り戻した凪徒が呆れたように、雪山にめり込んだモモを見下ろして声を掛けた。


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