倖せのかたち
確かに標準語で話してはいるのだが、明らかに東北方面と思われる、強い訛りがあるのだ。

「上京して間もないんじゃないですか?私も地方出身の1年なので、わかりますよ」

「鋭いですね!僕も1年です。あ、えーと…」

「あ、名前ですか?私は比嘉映子です。あなたは?」

「小比類巻朔太郎です。どうぞよろしく」

「こちらこそ。もしかして、青森の米軍基地近くの出身ですか?」

そう尋ねると、彼はまた驚いた様子だ。

「なんでわかったんですか?あ!比嘉さんというと、沖縄特有の苗字ですよね。それで米軍基地に詳しいとか?」

この苗字のせいで、しょっちゅう沖縄出身だろうと言われる私は、ついつい笑ってしまった。

「私、いつも沖縄出身だと思われますけど、パリ16区出身なんですよ」

「えぇ!?」

これも、毎度同じリアクションで慣れっこだ。

目が大きいと言われるものの、パッチリ可愛い二重とは違い、一重か奥二重か自分でもよくわからないが、鋭くて、髪も漆黒。

どう見ても生粋の日本人の風貌だし、実際にそうだ。
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