倖せのかたち
旅先での邂逅
チャラチャラしたサークルや飲み会は、もうこりごりだったが、一人で何か新しいことに挑戦したり、知らない人と話すこと自体は好きなので、夏休みになるとすぐ、以前から興味のあった、青春18きっぷの旅をすることに。

4泊5日の一人旅。

特に目的が云々、というよりは、敢えて昭和時代のような、めんどくさい形の旅行をしてみたかったのだ。

宿泊先も、ユースホステルに泊まってみたいと思い、予約もした。

とはいえ、4泊全部がユースホステルでは流石に疲れてしまうと思い、3泊はビジネスホテルで、ユースホステルは旅行最終日の1泊のみ。

特に目的もなくブラブラするだけのひとり旅の4泊目は、長野県内にあるユースホステルに泊まることになっていた。

どうやら、もう昔のように若者がユースホステルを利用する時代ではなくなってきていたようだが、見知らぬ大人たちから、ユースホステル全盛期の昔話を聞くのもまた面白い。

大人たちの中に一人だけ、ちょうど隣に同年代と思われる長身の少年が居た。

なかなか、端正な顔をした人だ。

みんなでトランプをしたあと、その少年に、

「学生さんですか?」

尋ねてみると、彼は一瞬驚いたようだったが、

「はい。あなたもですか?」

「ええ。都内の大学に通ってます。どちらからです?」

「僕も都内の大学ですよ。と言っても、嘘だって思われそうですね…」

照れたように言う彼。

何故、彼がそう言ったか、理由はすぐにわかった。
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