カレンダーガール
午前0時
今日の救急外来はとても穏やか。
このまま静かに時間が過ぎて朝が迎えられるかもしれないな。そんなこと思い始めた時、
プルルル プルルル。
ホットラインが鳴り、
「はい、救命外来です」
部長先生が電話に出た。

「15分後着。交通外傷。CPA」
しばらくして電話を切った部長の声で、スタッフがバタバタと準備を始める。

CPAとは心肺停止のこと。
今の時点で呼吸も心臓も停止している状態。
と言うことは、かなりの重体だ。

15分後。
搬送されてきた患者は、10代の少年だった。
どうやら、バイクで転倒したところをトラックとぶつかったらしい。
頭部の外傷がひどく、呼吸も心臓も止まっている。

「厳しいね」
近くにいた紗花が小声でささやく。
確かに。おそらく助からないだろう。

「鈴木先生。連絡先調べて、家族に来てもらって」
救命部長に患者の荷物を渡され、私は家族への連絡を任された。

処置スペースの片隅にあるデスクで、自宅の電話番号を調べて、連絡するのが私の仕事。

プププ  プププ  プププ
幸い身分証がありすぐに電話番号がわかったが、さすがに真夜中の電話にはなかなか出ない。
それでも、今はかけ続けるしかない。

プププ  プププ  プププ

「もしもし」
やっと出たのは、女性の声だった。
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