カレンダーガール
玄関まで行き、靴を履こうとしたところで、
「待って」
後ろからギュッと抱きしめられた。

「せ、先生」
「ごめん。ヤキモチだから、ごめん」
耳元で聞こえる、明日鷹先生の声。

ヤキモチって・・・

「桜子が小児科に行って、会える時間も減って不安だったんだ。俺自身も色々と外野がうるさくて、つい不安になったんだ」
珍しく弱音だ。
先生でもそんな気持ちになるのねと、正直驚いた。

「先生。私は明日鷹先生しか見ていませんよ。だから、不安になんてならないでください」

体の向きを変え、今度は私の方からそっと手を回した。
温かくて、見た目より逞しくて、ちょっと消毒の匂い。
そうしているうちに、今度は先生の顔がゆっくりと近づいてくる。

「桜子」
「はい」
息がかかるたびに、ドキドキしてしまう。

まずは唇、そこから首筋へ、先生が唇を落としていく。
その温もりが心地よくて、全身から力が抜けていった。

しばらくして、

「桜子、今ここにいる意味が分かってる?」
囁くように聞かれ、私はコクンと頷いた。

私だって、子供じゃない。
そのつもりがないなら、この時間にここには来ない。
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