カレンダーガール
しばらくの沈黙の後、果歩先生は諦めたように私を見た。

「で、病院に言いつけますか?私はすぐに首になりますね。桜子先生の時みたいにかばってくれる人はいませんから」
きっと、明日鷹先生のことを皮肉っているんだろう。

「私とあなたでは状況が違うでしょ?」
「フン」
鼻で笑って、私を睨んでいる。

「何しに来たんですか?病院に言う気があれば、最初からここには来ませんよね」
「まあね。自分でも何してるんだろうって思うんだけど、黙ってみていられなかったのよ。色々と重なるものがあってね」

きっと、私がここに来たのは自己満足だと思う。
助けられなかった啓介の代わりに果歩先生を助けたい。
そのことで、自分の気持ちを消化したい。そんな思いがあった。

「桜子先生。何でそんなに不器用なんですか?こんな事しても何の特にもならないでしょう?」
私の辛そうな顔をどう受け取ったのか、果歩先生のトーンが少し落ちた。

「これが私の性格だから、仕方ないわね」
「馬鹿ですね。気をつけないと今度は私に刺されますよ」
おとなしそうな顔して、果歩先生は傷口に塩を塗る。

「とにかく、やり直す気があるなら明日出勤しなさい。来なかったら、薬のことを上に報告するわ」
「・・・」
果歩先生は返事をしなかった。
私も返事を待つ気はなかった。
あの時とはもう違う。これ以上は踏み込まない。
だって、今の私には守りたい人がいるから。

私はそのまま、マンションを後にした。
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