カレンダーガール
お豆腐や野菜の煮物、白身魚など、食べやすいものを少しずつ食べて、お腹いっぱいになった頃、

「桜子さん。これからのことは考えているの?」
いきなり直球が飛んできた。

私が答えられず黙っていると。
「去年はね、あなたではなく別の方と明日鷹が一緒になってくれた方がいいのかもと思っていたの。でも、明日鷹はあなたでないとダメみたいだし。こうしてお目にかかって、あなたが良いお嬢さんなのも分かった。もう何も反対する気はないわ」
そう言うと真っ直ぐに私を見る。

「でもね、仕事と、母と、妻と。すべてを完璧になんて、無理なのよ。自分のキャリアを犠牲にしなくてはならないときが必ず来ると思う。そのことを、将来あなたに後悔して欲しくないの。それは明日鷹にも同じ事が言える。あなたのために、将来を閉ざして欲しくはない」
お母様は私と彼の関係に反対はしないと言った。
でも、賛成でもない。
きっと今でも、医師ではなくて、彼のことだけを一番に考えられるような普通の人との結婚を望んでいるのだろうと感じた。

そう言えば、お母様も医師のはず。
精神科の医師として今も勤務していると聞いた。
仕事と家庭の両立の難しさも、キャリアを犠牲にしなくてはいけない悔しさも、知っているからこその言葉なのよね。
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