カレンダーガール
春再び

3月 嵐の予感

3月。
今月で私の研修医も終わる。
妊娠も4ヶ月が過ぎ、もうすぐ安定期。
つわりも段々なくなって、食べられるようになってきた。

「桜子。紗花が来てるわよ」
階段の下から母さんが呼ぶ声。

紗花?
約束をした覚えはないけれど・・・

私は部屋着の上からカーディガンを羽織って、店へ顔を出した。

「どうしたの?」
いかにも仕事帰り風の紗花。
その顔は、なんだか不機嫌そう。

「話があるの。部屋、いい?」
「いいけど」
無言で階段を上がる紗花について私も自分の部屋に戻った。

「で、どうしたの?」

店からお茶と簡単なつまみを持ってきて、紗花に出した。
じっと私を見る紗花。

「何よ。何なの?」

「桜子。あなたは春からも小児科に残るのよね?」
「うん。そのつもり」

はー。
紗花のため息。

「森先生は?」
だから、
「結婚の話はしてないのよ。焦るつもりもない。今は目の前のことを」
「そうじゃないの」
強い口調で、紗花が遮る。

ん?
「何、どうしたの?」

「森先生に異動の話があるの。知らないの?」
「し・・・らない」

確かに、最近忙しそうで、あまり会えていない。
毎日何度もメールや電話はもらうけれど、春からの私の身の振り方だって、きちんと話が出来ていない。
でも、

「聞いた話では海外へ赴任になるらしいわよ」
私の表情を察して、紗花も申し訳なさそうに言う。

海外?
嘘、嘘。
もしそうなら、私に黙っているはずがない。
私だけじゃない。この子にだって、黙っているはずが・・・
私はそっとお腹に手を当てた。
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