カレンダーガール
ガチャ
今度はノックもなくドアが開く。

「おい、明日鷹」
現れたのは、剛だった。

「ノックくらいしろ」
「悪い悪い。機嫌悪いね」
言いながら、こちらの都合を聞くこともなくソファーに腰を下ろす。

うちの病院では、研修医と3年目までの新人が使うパーテーションで仕切られただけの合同医局と、それ以降の医師が使う個室の医局がある。
管理職でもない中堅医師の俺たちは、4畳ほどのスペースにデスクとソファーが据え付けられている小さな個室が与えられている。

「言いたいことがあるならさっさと言えよ」
なかなか口を開かない剛に、コーヒーを差し出しながら声をかけた。

「お前、大丈夫なの?」
剛が、心配そうに言う。
「自分でも、らしくないと思ってるよ」

ククク。
やはり笑われた。

「何だよ」
さすがに気分が悪い。

「いや、自覚はあるんだなと思って」
「馬鹿にするな」

剛とは大学時代から一緒で、長所の短所も知り尽くしているの悪友だ。
今更取り繕ってもどうしようもないのはわかっているが、言われれば腹が立つ。

「彼女は?大丈夫なの?」
「え?」
「おまえがそれだけ落ち込んでるんだから、桜子ちゃんは大丈夫かなと思ってね」
「どういう意味だよ」
剛は、分からないのかとでも言いたそうな顔をした。
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