カレンダーガール
「あのね明日鷹、『いつも優しい明日鷹先生が、みんなの前で研修医を叱り飛ばした。その研修医は仕事を外されて謹慎になったらしい』なんて噂が俺の耳にまで入ってるんだ。彼女はもっと辛いはずだぞ」
「それは、二日酔いで遅刻してくるのが悪いだろう」
当たり前のように言うと、
ククク。
おかしそうに笑われた。

「笑うな」
たまりかねて文句を言った。

「なあ、明日鷹」
持っていたコーヒーカップをテーブルに置いた剛が、じーっと俺を見ている。
「何だよ」
少し怖いなと思いながら、俺も剛を見返す。

「今まで俺が出会った奴の中で、お前ほど紳士で相手を気遣うことが出来る人間はいないと思ってる」
「だから、彼女が怒らせるようなことするから」
ふて腐れて言い返した。
「じゃあ、なんでみんながいるところで叱ったんだよ。桜子ちゃんを呼んで叱れば良かっただろう。一緒にいた子の上司にも告げ口したらしいじゃない。彼女をそんなに追い込んでも指導にはならないだろう?」
珍しく剛が真顔だ。

確かに、その通り。
今回は俺の怒りだけで、指導でも何でもないのかもしれない。

「理由は分かっているんだけどね」
「え?」
「聞きたい?」
いたずらっぽいいつもの剛。

「嫌、言わなくていい。だいたい想像できる」

その後剛が部屋から出て行き、俺はますます落ち込んだ。

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