カレンダーガール
「はあー」
明日鷹先生がため息をつき、困ったように私を見る。

明日鷹先生の心配もよくわかっている。でも、私にとって啓介は・・・

「彼は、4年も付き合った元彼なんです。だから、今更放っておけません」

あーあ、言ってしまった。
本当なら、伝える必要のない事なのに・・・

もうこれ以上ここにいるのは辛い。
何よりも啓介が心配で、探しに行きたい。
私は席を立ち、先生たちに背を向けた。

「でも、今は違うでしょう?彼とのことは過去のことでしょう?」
そんな私を、明日鷹先生は止めようとする。

「そんなに、簡単には割り切れません」

長い時間をかけて、私と啓介は特別な存在になった。
すでに恋人ではなくなったけれど、厳しい学生生活を共にした友人に違いはない。
研修医になってからは会う時間もなくて、それでも啓介のことはずっと気になっていた。
どんなに会えなくても、紗花や啓介が窮地に立ったら真っ先に駆けつけるのは私だと思っていた。
だから、行かなくちゃ。

私は店の入口へと向かう。

「じゃあ、今君を指導している上司として言わせてもらう」

え?
私は思わず振り返った。

「君が危険に飛び込んでいくようなまねを許すことは出来ない。今は、じっとしていなさい。それが出来ないなら、僕は指導医を降りるよ」
明日鷹先生の怖い顔。

「ひどい。なんでそんなこと言うんですか」
ちょっと泣きそうになりながら、私は睨んだ。

「いいね、勝手に動かないで。僕は本気だよ」
真剣な顔で睨み返されて・・・結局、頷くしかなかった。
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