スパダリな夫はケダモノな本性を隠せない
「今日はありがとうございました。ちょっとテンション高すぎでしたよね? すみませんでした」

 今日は歓送迎会だ。一応主役の一人として、お礼だけは言っておきたくて伝えると、彼はゆっくりと首を左右に振る。

「何も迷惑なんてかけていないよ。でも、大丈夫? 藤枝さん」
「え? どうして私の旧姓をご存じなんですか?」

 驚いて目を丸くすると、彼はどこか悲しそうに肩を竦めた。
 どうして彼がこんな表情をしているのか。考えても全然思いつかない。
 首をひねっていると、彼は困ったように目尻を下げてほほ笑む。

「僕はね、藤枝凪沙さんを知っているんだ」
「え?」

 諏訪とはクリニックで初めて顔を合わせたはず。それなのに、どうして旧姓時代の凪沙を知っているのだろう。

 何度か瞬きを繰り返していると、「やっぱり覚えていないか」と彼は肩を落とす。

 チラリとこちらに視線を向けられ、どこか責められている気分になる。
 ばつの悪い気持ちでいると、彼は小さく声を出して笑う。

「実は僕、藤枝総合病院に研修医時代お世話になっていたんだ」
「え? そうなんですか?」
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