マーメイド・セレナーデ

始まりの朝日

朝の柔らかい陽射しがカーテンの隙間から届いてまだあたしにまとわりつく眠気をゆっくりと追いやる。
シーツの上で腕を滑らせ、隣の温もりを探した。
目的の温もりに指先が触れるとそれだけであたしは満足して身体を起こした。


ベッドの上でしばらくぼんやりしていたら隙間から差し込む朝日に数度瞬きをして、両手を天井に突き上げて伸びをした。

そこで、隣で身じろぎしたのに気付いた。

顔はこの角度からは見えなかったけど丸まってるから寒いのだろうとあたしが起き上がったことでめくれたタオルケットをかけて寝室を出た。


リビングの片隅に置かれたキャリーバックを目に入れて、通りすぎ様に軽く触れて、キッチンに入った。
お湯を沸かしてから、コーヒーメーカーのスイッチを入れる。自分用にココアも作って一口すすってからソファーに戻った。


久しぶりの時間に追われないゆったりとした朝に、それだけであたしは満足してしまった。
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