マーメイド・セレナーデ

浮かび上がる記憶

身支度に追われながら、テーブルに無造作に置かれた旅行雑誌にふと目がついて思い出す。


あたしが、軽い気持ちで旅行雑誌を購入して、翔太に見せたとき。おもいきり引きずってしまった。

翔太の言い分もわからなくもない、けれど。
お互い引くに引けなくなって、終わりの見えない平行線を辿ったっけ。

少しだけでも素直になればあんなふうになるなんてなかっただろうに、なんて今になって振り返ってみると思う。がむしゃらに我を通そうと躍起になって、意地を張って。

別の機会に、と言えるだけの素直さがあればよかったと今になっても思う。
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