マーメイド・セレナーデ

非日常の現実

身支度を始めて化粧道具を引っ張りだしてくると寝室の扉が開いた。



「まだ寝ててもよかったのに」

「……真知より起きるのが遅いとは屈辱だな」



その足でキッチンに向かった翔太はコーヒーメーカーのスイッチを入れると温め直していた。
翔太の言葉には一見、毒があるように思えるのだけれど。
あたしにはそれが痺れるに甘みを含んでいることを知ってるの。


化粧してるのを見られるのはなんだか嫌だけどそれは同棲中の身。どうしようもない。
起きてくる前にすませてしまおうと思っていたのに。



「向こうに行ったらどこに行きたい?」

「買い物くらいしか時間がないんでしょ?」

「まぁ、そうだな」

「なら買い物でいいわ。25日は予定があるのよね?」

「ああ、」



隙間から見える翔太。ぴょこんと跳ねた寝癖が愛しい。
< 172 / 302 >

この作品をシェア

pagetop