マーメイド・セレナーデ
memory-m.S-
狭い教室の中に何人もの同じ学生服を着た生徒が詰め込まれていて、見飽きた風景。
俺は前を見るのも嫌気が差してさっきまで授業があった数学のノートに視線を落とした。

5限が担任の数学だった、だから引き続きHRが行われていた。
教科書も、ノートも開かれたまま、何行にも続いて数式がノートに書かれている。


くるりとシャープペンを回す。



「提出は来週の金曜までだぞ」



担任のその言葉に顔を上げた。
紙をヒラヒラさせて、いいかぁ、とじゃあ終わりだ、と声を上げた。

一昔前で言えば花金、先生も学校から解放されて心なしか嬉しそうだ。



「事故るなよ~、」



教室からさっさと出て行く後姿を見て、俺は前を向き直った。
前から回されてくるプリントを1枚手にとって後ろに回す。


先生が居なくなった教室は節操ナシにうるさくなってる。
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