年下御曹司の箱入り家政婦
私がレジに向かうと櫻ちゃん達は
すでにレジ前で待っていた。

私を見るなり櫻ちゃんは安心したように
微笑みかけるが、ふと私の後ろに目を向け
不穏に顔を曇らせた。

私は櫻ちゃんの視線を追って後ろを
振り返ると新さんも私に続いて厨房から出てきたのだ。


「えっ!?
新さんなんでわざわざ出てきたんですか!?厨房に戻ってください!!」

私はややこしくなりそうな雰囲気に
慌てて新さんを厨房に押し戻そうとするが
「挨拶するだけだ」と言って新さんにその手を捕まれる。


「今日はお客さんを連れて来てくれてありがとうございます」

新さんは私の手を掴んだまま
櫻ちゃんに向かってニコリと余裕の笑みを浮かべた。

「いえいえ、あなたの為に連れてきたのではないのでお構い無く。それよりその手を離してくれませんか?」

櫻ちゃんは顔こそは笑顔を向けているが
あきらかにその声は怒りをはらんでいた。

私はその櫻ちゃんに漂う不穏な空気に
急いで新さんの手を振りほどく。

「お、お会計するわ。」

「うん。羽菜ちゃん二人の分も僕が払うからこれでお願い。」

櫻ちゃんはなんとも言えない笑顔で
クレジットカードを差し出した。

「了解。一括でいいわね」

櫻ちゃんは私の言葉にコクコクと頷くと
後ろで腕組みをして見守る新さんに目を向けた。

「パンケーキ専門店だけあって
ベリーのパンケーキとても美味しかったです」


櫻ちゃんの言葉に新さんは腕組みをしたまま「それはどうも。またお待ちしてますよ」
とフッと悠々とした笑みを返した。

その瞬間、櫻ちゃんがカチンときたのが
手に取るように分かった。

私は出てきたレシートを急いで引き抜くと
「櫻ちゃん櫻ちゃん、サインお願い!」
バインダーに挟んでペンと一緒に差し出した。

櫻ちゃんはイライラした様子でレシートに
サインをしている。

新さんはそれを見ながら後ろで余裕の笑み、
蘭さんからはずっと冷たい視線を向けてくるし、この針のむしろ状態の中で私はひたすら早く時間が過ぎていくことを願う。

ただ1人、この状況を全く理解していない
斗真くんは一生懸命おまけの飴玉をレジ前の籠から選別している。

この時ばかりは能天気な彼と代わりたいと思った。


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