ずっと、好きなんだよ。
天使の、導きで。

奈和side

時間が全てを解決してくれる。


そう信じることにして私は今度こそ本当に忘れるという決断をした。


残暑が厳しく、なかなか寒くならずに迎えた11月。


会社で芋煮会をするべく宮森唯一の観光地であるキャンプ場に赴いたことがあった。


通年ならもうとっくに木々は色づいているのだけれど今年はなんだか色褪せていた。


紅葉が色づくのに必要な適度な寒暖差が足りなかったみたい。


私は...なんてまた考え事をしようとしてやめた。


今はすっかり冬なんだから。


やっと、冬になったのだから。


会社からの帰り道。


木枯らしに吹かれブルブル震えながらも熱を産生しようと必死に手足を動かす。


ニット帽にマフラーの重装備をすれば店長やパートさん方に笑われるのは分かっていてもこの寒さを耐え凌ぐためにはそんなの構っていられない。


私は今日も着込んで忘れようとして


寒さで思い出しそうになって


たまにまだチクリと痛む胸を


見て見ぬふりをしてやり過ごしている。

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