【完】永遠より長い一瞬を輝く君へ




授業が終わり、校庭に出る。


小坂には、クラスメイトにあまり見られないよう教室ではなく校門の前で落ち合おうと言ってある。


校庭を歩いていると、校門の前に遠目からでもそれとわかる小坂の姿があった。


「あ! 榊くん!」


こちらからはなんのアクションも起こしていないのに、小坂はこちらに気づいて顔をほころばせた。


「早いな」

「そう? さっき来たばっかりだよ」

「じゃあ……行くか」

「うん!」


ぎくしゃくとした空気を溶かせないまま小坂を促し、ふたりで歩き出す。


デートってこれで合っているのだろうか。

正解がわからない。


こんな大柄な男と小柄な女子高生が並んでいると、俺が小坂を連れまわしているように思われるんじゃないかと一抹の不安がよぎる。

向かいから女子中学生たちが歩いてきて、なんとなくうつむいて歩いていると。


「嬉しいな、榊くんとデートなんて」


ふと、小坂が抑えた声でそう呟いた。


「そう、か?」

「デート楽しみすぎて、授業あんまり集中できなかったよ」


髪を耳にかけながら恥ずかしそうにはにかむ小坂は、純粋に可愛いと思う。


そしてそんな可愛い女子に、こんな可愛いことを言われているこの状況に、頬を叩いて夢じゃないかと確かめたくなるのを必死でこらえる。

相手が喜ぶことをさらりと言えるところを見ていると、クラスメイトたちが彼女に夢中になる気持ちがなんとなくわかった気がした。


俺は照れを散らすように、平静を装って隣の小坂に問いかける。


「それで、どこ行くんだ?」

「ずっと気になってたカフェがあって。榊くん、甘いの好きでしょ?」

「ああ。カフェか。いいな」
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