誰もいないこの世界で、君だけがここにいた



 次の駅で降りると、いつも街中を闊歩している若者たちは姿を消していて、休日出勤のサラリーマンたちもすっかりいなくなっていた。
 短い階段を降りる。小さな駅前にはパン屋さん、お花屋さん、クリーニング屋さんが囲む小さな広場があって、そのすべてがもう閉まっているのに、二十四時間営業のコンビニだけが無遠慮に光を放っていた。
 周囲をぐるりと見渡す。
 立ち並ぶ街灯の下に、金髪を反射させている一人の男の子が立っていた。
 スマホを片手に、きょろきょろと何かを探している。でもその目はどこか虚ろで、彼が何を求めているのかはわからない。
 その視線が一瞬私と合うものの、私の存在は駅前の景色の一部であるかのように、止まることなく通り過ぎていく。
 ゆっくり一歩を踏み出し、彼の前を通り過ぎた。

「……待っててくれて、ありがとう」

 男の子の不思議そうな視線を背中に感じる。
 でも何も言われることもなく、私は帰路についた。



 その日、私は一人の友達を失った。


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