原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 アビゲイルに転生したチカ先生に前世の記憶が戻ったのは、まだ10歳の頃だったという。

 ある日、いつもと変わらない朝、目覚めて
『自分は日本人のチカだった』と頭に浮かんだらしい。
 そして何故か、現在の自分はアビゲイル・フロイド・グレンフォールである、と素直に受け止めることが出来たそうだ。


「ホナミちゃん……
 いいえ、これからはロザリンドと呼ばせていただくわね。
 原作者だった貴女に教えていただきたいことがあるの」


 前世がチカ先生だったと明かしても、アビゲイルは公爵令嬢の口調を崩さなかった。


「王太子の秘密とは何なの?
 第2章からそれを判明させるはずだったわよね?
 私が渡されていた第2話には、まだ秘密が明かされていなかったの。
 殿下は何か闇を抱えているひと、だった?
 それは彼の周囲を巻き込んでバッドエンドへ向かうような秘密?」

「え、えっと……」
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