原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 普通科で主に領地経営や国政に関する授業を選択しているオスカーと、魔法省長官の息子グレンジャーとの共通点と言えば『養子であること』だ。
 その一点のみだが、ふたりは良い友人関係を中等部の頃から続けている。


 最初に声をかけたのはオスカーの方だ。
 中等部ではまだヒロインのミシェルは現れないのだが、ウェズリーやその他の攻略対象者は既に学苑生活を始めていた。
 グレンジャーも彼等のひとりだった。


 紺色の髪に赤い瞳を持つ彼は生粋のルーランド人ではない。
 母国で食い詰めて、豊かなルーランド王国に仕事を求めて移住してきた両親に連れられて入国したのは7歳の頃。
 程なくして働きづめで体力の低下していた両親は流行病で立て続けに亡くなった。

 王国には親族も、両親の友人もいなかったグレンジャーを引き取って育ててくれるような人間は
いなかったので。

 彼は養父のオルコット長官の目に留まるまで、孤児院で身体中を駆け巡る魔力の発動に抗い続けたのだった。
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