原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 その上彼はホナミを恨むと、言った……。
 塩対応どころではなく、嫌われて憎まれて離れて行くかもしれない。


 オスカーだけではない。
 アビゲイルもそうだ。

 彼女も自分の父親グレンフォール公爵から事の
あらましを聞いているだろう。
 婚約者の王太子の対立候補に浮上したオスカーの事、ロザリンドの事、ホナミの事をどう思っているのだろうか。

 アーノルドの闇落ちについて、その場しのぎのいい加減な返事をしたと思われているかもしれなかった。
『忘れていました、ごめんなさい』で、許してくれるのだろうか。


 何故、今頃前世の記憶が戻ってきたのかわからなかったが、こんなことなら忘れたままにして欲しかった。
 事情もわからないまま、オスカーと手を取り合って。
 共に悲しみ、憤慨し、彼の運命に立ち向かいたかった。


 自分は転生者だと、それも原作者ですと。
 もっと早くに打ち明ければ良かった。

 その時に覚えていた物語の記憶を全て共有していれば、こんなに傷付いた彼を見ずに済んだかもしれなかった。

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