原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 オスカーが差し出してくれた彼のネクタイにも、直ぐに手が出なかった。

 機嫌の悪い顔なんて、以前はロザリンドに絶対に見せなかったのに。
 タイの交換なんて、彼から言い出すとは驚いた。
 感情が駄々漏れで可愛かった。
 本当に好きだった。


 26の女が理想の男性を語るなんて、バカみたいだったよね。
 でも貴方とチカ先生はそれを聞いても、笑わなかったね。

 ありがとう、ミカミさん。
 まだ17歳のオスカーなのに、無理させちゃった。
 ヒーローは特別な男にしたかったから。


 だけど私のオスカーは特別なんかじゃなくて、
普通がいい。
 普通のオスカーがいいの。



 もう会えないのかな。
 まだホナミだって言ってない……
 普通がいいから、って言ってな……い……
 


「ロージー! ロザリンド!」

 いきなり風が吹き込んで、狭い小屋の中に何人もの気配と足音が聞こえた。
 あぁ、間に合ったのだ、と思った。



 乱暴な程、身体を揺さぶられて。
 怒鳴るように、名前を呼ばれて。
 骨が軋むくらいに、強く抱き締められて。
 呼吸もままならない、キスを繰り返された。


 私だけの。
 ヒーローの貴方が、助けに来てくれた……
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