原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
「侯爵様になるからって、見下した目で俺を見るなよ!」

「ダンカン、いきなりどうし……」


 弟が遠縁の侯爵家に養子として入り、次期侯爵になる幸運を妬んだ彼はすれ違いざま、言いがかりのようにオスカーに言葉を投げつけた。
 そして、ぶつかったふりをして階段からオスカーを突き落としたのだ。


 決して仲が悪かったわけではない。
 幼い頃から一緒に遊んでいた兄弟だった。
 兄もオスカーの命まで狙っていたのではない、と思いたかった。
 ちょっとした怪我をさせるだけのつもりで……

 もしかしたら一生残るような怪我をさせて、弟のオスカーに成り代わりたかったのかもしれないが。
 意外とオスカー少年の身体は頑丈だった。



 それよりも。
 落とされた一瞬に彼の脳裏に超高速で前世の。
 オスカー・ウェイン・マーカスの経験したことのない情景や会ったこともない人達の顔が浮かんで消えた。

 その圧倒的な情報量が受け止められずに、彼は
意識を失った。
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