原作者の私ですが婚約者は譲っても推しのお義兄様は渡しません!
 そのロザリンドの囁きから、15歳の乙女と思えないほどの色気を感じたので、オスカーはあわてて囁かれた左耳を押さえ身を引いて、義妹の顔を見た。


「気が進まない、と仰っていらしたでしょう?」

 いつもは大人しい少女だと思っていたのに、艶然とした微笑みをロザリンドは浮かべていて。
 そう楽しそうに言う彼女は、まるで知らない女性のように見えた。


 ◇◇◇


 オスカーには、前世の記憶がある。
『それ』を思い出したのは、コルテス侯爵家の
後継になることが決定した12歳の頃。


 オスカーは地方の伯爵家の3男で、実家は領地は有っても裕福とは言えず……
 跡継ぎの長男はともかく、次男の兄と3男の自分が貴族であり続ける為には貴族の婿入り先を探すか、文官や騎士団など王城関係の仕事に就き、
立身出世して、自力で士爵位を授爵される様に、努力邁進するしかない。


 まだ12歳のオスカーには、それは遠い未来の話だったが。
 3歳上の15歳の次兄にとっては、切羽詰まった問題だったのだろう。
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