かげろうの月
 尚哉の浮気の証拠の黒い手帳を、見てしまった時かずっと、夫と揉める度に私は涙を流していた。
もう涙が枯れる程泣いたと思っていたのに、陽斗への暴力を見たらまた涙が溢れてきた。

 毎週土曜日は尚哉は、外泊するのが
当たり前になっていた。
 そんな夫のいない土曜日に、いつものように陽斗を寝かせて、私はひとり
夜の9時から始まる、2時間のテレビドラマを観ていた。
サスペンスで、殆どが人が死んで話が始まる。なので暴力シーンなどもあることが多い。
 今日のドラマは夫が妻に殴ったり蹴ったりと、激しく罵りながらの暴力シーンがあった。

私は暴力シーンを観た時、心臓の鼓動が早くなり、息をするのが苦しくなった。鼻呼吸が出来なくなり、口で呼吸をしなければならなくなって、頭も真っ白になり、思考が停止してしまった。

この時の自分に、何が起きたのか分からなかったが、これが心的外傷後ストレス障害(PTSD)だと後で分かった。

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