これって政略結婚じゃないんですか? ー彼が指輪をしている理由ー
「ええ、一緒にいますよ。先日のお店にいるんですけど、もしよろしければ、今からこちらに来られませんか?」

弘樹の発言に思わず声を上げそうになったけど、寸でのところで堪えた。徹也くんはどう答えるんだろう。本当にやってくるだろうか。

『わかりました。身支度整えたらすぐに行きます。すみませんが、晶紀が逃げないように引き止めておいてください」

そう言って通話は終わった。弘樹はニヤニヤしながらスマホを私に返した。

「あれ、多分急いでここに来ると思うよ。楽しみだなあ。多分、一緒にいたあの人も連れてくるよ」

自信たっぷりに言い切る弘樹に内心ムカつきながら、本当に二人一緒にやってきたらどうしよう。私は気が気ではない。

もしかして、婚約破棄を言い渡されるのかな……
しばらくして、アイスコーヒーと紅茶が運ばれてきた。

「昼飯食ってないんだろう? 大丈夫か?」

こんな状態のせいか、空腹を感じない。
そんな私の心情をわかっているくせに、平気で毒を吐く弘樹は優しくない。

「そんな、緊張するほどのことじゃないだろ」

「所詮、弘樹にとっては他人事でしょうけど、私は当事者なんだからね」

「はいはい……あ、来たんじゃない?」

弘樹が指差す店の入口に視線を向けると、そこに徹也くんがいた。
徹也くんと一緒だった女性と共に……

徹也くんがさっきの部屋着と違うのはわかるけど、連れの女性も服装が違う。
もしかして、徹也くんの部屋に着替え、持ち込んでたの?

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